廃鉱山の町に広がる西欧風の町並み『小坂』
小坂(こさか)/秋田県鹿角郡小坂町
鉱山盛りし頃の遺産を生かしたまちづくり
秋田県県北の山間に位置する小坂町。明治期に銀の生産量日本一を誇った小坂鉱山の膝元にあり、鉱山町として発展を遂げてきました。小坂鉱山は1990年代に閉山し、最盛期に3万人を超えたとされる町の人口は今や5千人を下回っています。
そんな小坂町ですが、近代の繁栄を偲ばせる立派な洋風建築が数多く保存されています。
町のシンボルとなっているのが『小坂鉱山事務所』。鉱山会社の事務所として1997年に建設された洋風の建築ですが、閉山後に小坂町に譲渡され、移築のうえ建設当初の姿に復元されました。建物の前面には西洋式の開放的な庭園が広がります。
鉱山事務所と同じ通りには日本最古級の芝居小屋である『康楽館』が保存されています。和式の内装とは裏腹に洋風の端正な外観が特徴的です。こちらは建設当初から移築や大規模な復元を経ることなく現役で活躍している貴重な存在です。
その他にも病院や保育園などに使われていた洋風建築がいくつも残されています。
そしてこれらの洋風建築群が並ぶ通りは『明治百年通り』という名で閉山後に整備されています。通りにはアカシア並木やレンガ調の歩道、色とりどりの花が咲く花壇などが連なり、町並みはさながら西欧の町のようです。
筆者が訪れた日は偶然にもコスプレイベントが開催されていたようで、異世界感のある町並みを背景に写真撮影に没頭するコスプレイヤーが何人も見られました。
通りの脇には1本の線路が並行して敷かれており、南に進んでいくと旧小坂駅の跡地があります。この町にはかつて小坂鉄道という鉄道が通っており主に貨物輸送で隆盛を極めましたが、2009年に路線は廃止。廃止後は鉄道関連の遺産を再生し観光業に生かそうとする動きも活発化しています。
一方で、洋風建築の連なる一帯から少し外れたところには、鉱山町として栄えし頃の町並みも残されています。かつて商店街として賑わったという一帯に来てみると、人影もなく寂し気な様子。人口減少の進む町の厳しさを感じます。
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衰退を隠せない部分もありますが、町に残された立派な遺産群、そしてそれらの魅力を生かした取り組みの数々に、町を盛り上げようとする地元の気概が感じられます。周辺には尾去沢や松尾など廃鉱山の町がいくつかありますが、他では見られない独特な魅力を持っているのがこの小坂の町です。
(取材年月:2019年9月)
訪問ガイド
所在地
- 秋田県鹿角郡小坂町小坂鉱山
アクセス
- 【大館方面から】JR奥羽本線大館駅から秋北バスで約50分、鉱山事務所前または康楽館前下車
・1日10往復(休日は8往復)
・リンク:秋北バス
- 【花輪方面から】秋北バスでJR花輪線鹿角花輪駅から約1時間/十和田南駅から約30分、鉱山事務所前または康楽館前下車
・1日15往復(休日は10往復)
・リンク:秋北バス - 【盛岡・青森方面から】【高速バス】盛岡・青森線「あすなろ」号で小坂高校前下車、徒歩約30分(1.9km)
・1日4往復
・リンク:弘南バス
※2020年5月現在