太平洋に浮かぶ重伝建の島『出羽島』
出羽島(てばじま)/徳島県海部郡牟岐町
江戸時代に移住によって拓かれた漁村
出羽島は徳島県南部の沖合に浮かぶ全周4kmほどの離島です。人口100人に満たない小さな離島ですが、伝統的な漁村集落の風致を残していることが評価され、2017年に国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されています。
島の歴史は江戸時代に遡ります。江戸時代後期に漁民がこの島に移住し、主に鰹漁を生業としてきました。漁業の隆盛によって島は発達し、高密な漁村集落が現在に残されています。
出羽島へのアクセス手段は牟岐港から1日6往復発着する連絡船のみ。牟岐港を出港した船は15分ほどで島に到着します。
島の北部には数百メートルにわたって伸びる砂嘴(さし)があり、砂嘴によって小さな入江が形成されています。集落があるのは港として利用されているこの入江の周辺。島のそれ以外の部分にはほぼ手付かずの自然が残されています。
港の目の前には神社があり、ここから入江を囲うように高密な漁村が形成されています。島にある建築物はすべて江戸期から昭和30年代頃までに建てられたようで、新しい建物は全く存在していません。
自動車の無い出羽島では荷物の運搬は簡素な手押し車(通称「ねこ車」)が担っています。各民家の軒先にはねこ車が無造作に置かれており、この島ならではの生活景が広がります。
砂嘴の根元あたりまで来ると、集落は谷戸に入り組むように広がります。斜面を少々上ると墓地のほか、わずかながら畑地も確認できます。
このあたりは手羽島の集落を一望できるスポット。台風の多い太平洋側ならではの頑丈な瓦屋根が印象的。遠くには牟岐の町や無人島の津島なども見渡すことができます。
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近世までは西日本の太平洋側では多くの離島に漁民が住み付き、こうした漁村を形成してきました。出羽島はそのうち今なお集落が比較的良好な状態で残されている稀少な例。重伝建への選定により集落の景観保全が活発に進められることに期待したいところです。
(取材年月:2017年11月)
訪問ガイド
所在地
- 徳島県海部郡牟岐町大字牟岐浦出羽島
アクセス
- JR牟岐線牟岐駅から徒歩約10分(0.7km)、牟岐港から出羽島連絡船で15分、出羽島港下船
・牟岐港所在地:徳島県海部郡牟岐町大字中村本村5−7
・リンク:牟岐町
※2020年5月現在