小さな孤島の巨大遺構・北大東島『燐鉱石貯蔵庫跡』
北大東島燐鉱石貯蔵庫跡/沖縄県島尻郡北大東村
島の歴史を物語る史跡
沖縄本島から300km以上も東の海上に位置する北大東島。戦前まで南大東島とともに企業による統治がなされていたという日本史上稀に見る歴史を持ちますが、島の主要産業として長らく燐(リン)鉱石の採掘が行われていました。
元々はサトウキビ栽培を目的として開拓された島ですが、燐鉱が発見されたため1919年から鉱石の採掘を盛んに行うようになったそうです。採掘は活況を呈し、最盛期には島の人口が2,700人に達したといいます。
戦後、米軍統治下の1950年に燐鉱は閉山。燐鉱石貯蔵庫を含む関係施設は当時からほぼ手付かずの状態で島の片隅に残されています。
周辺一帯は特に立ち入りも禁止されていないため、廃墟と化した施設を間近に見ることができます。
海岸のほうに下っていくと船揚げ場や桟橋などの遺構が確認できます。地形的な制約から港が十分に整備できず、鉱石の積出しに難儀したようですが、港の整備が不十分なのは今も変わりません。
丘のほうを振り返ると煉瓦造のドライヤー建屋をはじめとする貯蔵施設の遺構が見て取れます。損傷状態はかなり激しく、原形をとどめないものも多々あります。
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これらの巨大な遺構は2016年に『北大東島燐鉱山遺跡』として史跡に登録され、補修工事が進められているようですが、損傷が激しい箇所も多々あるため厳しい工事が予想されます。貴重な産業遺産が確実に保護されることを祈るばかりです。
(取材年月:2018年12月)
訪問ガイド
所在地
- 沖縄県島尻郡北大東村字港
アクセス
- 北大東島西港下船すぐ
- 北大東島中心部(村役場)から徒歩約30分(2.1km)
※2020年5月現在