闇市風情の漂う “北九州の台所”『旦過市場』
旦過市場(たんがいちば)/北九州市小倉北区
200店以上が密集する全蓋アーケード街
小倉駅南口に広がる繁華街・魚町のアーケード街を南に下っていくと、ひと際異彩を放つ高密なアーケード街に行きつきます。その名は『旦過市場』。飲食店や鮮魚店、惣菜店などが所狭しと並ぶ “北九州市の台所” として市民に親しまれており、メディアに取り上げられることもしばしばある有名なスポットです。
市場の入口にはラッパの口のように褄が広がったアーケードが構えています。角には『丸和』というスーパーがあり、戦後間もない頃から市場とともに歩んできました。
余談ですが、日本で初めて24時間営業を開始したのがこの丸和だとか。周辺が昼夜問わず賑わう一帯であったことを物語っています。
市場に入ってゆくと狭い道路の両側に商店が建ち並び、頭上には全蓋式のアーケードが被さります。太陽の光が全く差し込まない閉鎖的な空間が戦後のマーケット建築のような雰囲気を醸し出しています。
筆者が今回訪れたのは店が閉まっている深夜帯。人気は殆ど無く、市場の素の表情が見られます。
アーケードに面した一画には旦過中央市場と呼ばれる卸売市場があり、一層レトロな空間が広がっていますが、ここでは紹介を割愛します。
アーケードの裏へと伸びる路地に入ると新旦過横丁という飲み屋街に行きつきます。こちらは迷路のように入り組んだ狭い路地沿いに発達しており、アーケード街とはまた異なった趣があります。
市場は南北に伸びるメインストリートからいくつも道が分岐しており、入口がいくつも設けられています。
市場の西側に出ると神嶽(かんたけ)川に張り出す市場の建物が見て取れます。これは昭和初期に市場が急速に拡大した際の名残。道路以上に占有のハードルが高い河川の上に建物が並ぶ光景はかなり稀なものです。
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大都市小倉の街の中で時間が止まったかのような空間を残す旦過市場。近年再開発の計画が進められており、見納めとなる日も近そうです。多くの人で賑わう昼間の様子を見るのも良いですが、じっくりと建物やアーケードを観察するには店の営業していない早朝や深夜の訪問もお勧めです。
(取材年月:2019年5月)
訪問ガイド
所在地
- 福岡県北九州市小倉北区魚町4丁目
アクセス
- 北九州モノレール旦過駅下車すぐ
- JR鹿児島本線ほか小倉駅から徒歩約10分(0.7km)
※2020年5月現在