渓谷に形成された山岳寺院の門前町『室生』
室生(むろう)/奈良県宇陀市
“女人高野” 室生寺の門前
奈良県東部の山間に位置する室生は真言宗室生寺派大本山・室生寺の門前に形成された山間の小さな集落です。室生寺といえば真言宗において女性の参詣が許されていた稀有な存在であり、女人禁制であった高野山に対して“女人高野”と称されています。
室生寺が所在するのは渓谷を流れる室生川の右岸。日本最古級の五重塔をはじめとして立派な伽藍が山腹に建ち並びます。一方、集落は川の対岸に形成されており、寺と集落の間は赤い欄干が印象的な太鼓橋で結ばれています。
集落は太鼓橋の袂から左右に伸びる県道に沿って広がります。県道沿いに並ぶ建物は十数件しかなく規模は小さめ。特筆すべき景色はありませんが、山間の門前町らしい哀愁を感じます。
建物の間を擦り抜けて背後の斜面を上ってゆくと、景気はたちまち農村集落となります。
室生を取り囲む室生山地は火山活動によって形成された山地。起伏の激しい地形の中に集落は形成されています。奥には室生寺の伽藍が望めます。
斜面をさらに上っていくと比較的開けた地があり田畑も広がりますが、起伏の激しさは変わりません。集落内の道路は屈曲やアップダウンが多く、昔ながらの姿を留めています。
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室生は奈良県下でも著名な古刹を擁しながらも極端な観光地化はされておらず、侘しい雰囲気を濃く残します。奈良市内や斑鳩などとは趣の異なる奈良の奥深さを味わうには絶好の地です。
(取材年月:2019年12月)
訪問ガイド
所在地
- 奈良県宇陀市室生
アクセス
- 近鉄大阪線室生口大野駅から奈良交通バスで約15分、室生寺下車、徒歩約5分(0.3km)
・1日7往復(休日は8往復)
・春のシャクナゲ開花時期は桜井市の長谷寺との臨時シャトルバス運行あり
・リンク:奈良交通
※2020年5月現在