防火建築が林立するメルヘンチックな街『石動』
石動(いするぎ)/富山県小矢部市
旧北国街道沿いに連なる防火建築群
小矢部といえば、1980年代に東京帝大土木学科出身の小矢部市長・松本正雄氏が公共施設に西洋風の豪華な建築を採用し、『メルヘンの町』としてその名を全国に馳せました。
しかし、建築が魅力的なのは公共施設だけではありません。市の中心部である石動地区には意匠が凝らされた民間の防火建築が多く連なります。
石動駅のほど近く、県道32号線沿いの石動町には3階建の共同建築が連なる一帯があります。これらの建築は1980年代前半に市街地再開発事業によって整備された防火建築。石動町第1、石動町第4、石動町第5、石動町第8といった複数の地区に分割したうえで段階的に事業が進められてきました。
意匠は事業地区ごとに個性豊かですが、いずれの建物も1階を店舗、2階を倉庫、3階を住宅とし、従前土地の境界線上に界壁を設ける構造が基本になっています。そして建物の1階部分は道路から若干セットバックしており、前面の歩道幅員はかなり広く確保されています。
こうしたデザインコードが統一感ある景観を生み出しています。
一方、中央町のあたりに来ると県道72号線沿いに防火建築帯が連なる一帯があります。こちらは32号線沿いの建築群より一世代前に整備された防火建築帯と思われますが、こちらも3階建の建物が統一感ある町並みを形成しています。
建物の形状は比較的単調ながらも、色彩は実に個性豊か。突き当りには小矢部の誇るメルヘン建築の1つ、市立石動中学校の塔も見え隠れします。
通りにはメルヘンの町らしくアラビア数字の記されたおしゃれな時計も。細かいストリートファーニチャーにもこだわりが感じられます。
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公共、民間問わず都市景観の形成に対する意識の高さが窺える石動。異国に来たかのような雰囲気さえ感じさせる特徴的な街です。
(取材年月:2020年2月)
訪問ガイド
所在地
- 富山県小矢部市中央町、石動町
アクセス
- あいの風とやま鉄道石動駅から徒歩約10分(0.7km)
※2020年5月現在